学生の頃から全作品を読み続けているのが島田荘司氏の作品です。「占星術殺人事件」が有名ですが、最初に
読んだのは「斜め屋敷の犯罪」でした。すごいトリックに感動したのを覚えています。
主に推理小説、横溝正史や江戸川乱歩、アガサ・クリスティなどが好みですが、最近では今野敏の警察ものも
読むようになりました。
私のお気に入りの本ベスト3
第3位 犬笛(西村寿行著 1976)
中学生位の時に読みました。娘を誘拐された男が愛犬とともに車で旅に出て犯人を追い詰め娘を取り戻すというストーリーです。
娘の発する犬笛を頼りにあちこち回りますが、行き詰った末に居場所を突き止め、犬が人間顔負けの活躍をします。
当時動物が活躍する映画やドラマはほとんどなく、アメリカの名犬ラッシーやわんぱくフリッパー位でした。この作品も映画化や
ドラマ化されましたが、そこそこの人気でした。やはり原作が一番だと思います。
西村氏の作品には動物が出てくるものが多いのですが、如何に彼が動物好きだったかを物語るものでしょう。作品中は大活躍して
最後に死んでしまうようなものはほとんどなかったと記憶しています。
氏の作品最大の特徴は一文一文が短めで大変読みやすいということです。年少者から高齢者まですんなり読めることです。
また露骨な描写の作品も多々ありますが、そうでないもの(社会派小説など)は社会問題を深く掘り下げ、詳細に読者に問いかけて
います。
第2位 隠蔽捜査(今野敏著 2005)
読まれた方が多いと思いますが竜崎伸也というキャリアらしくない警察官が登場します。
この人は警察組織の上下関係や上司などへの忖度などほとんど気にしません。すべて問題解決に向けて一番いい方法を考え、全力でそれに
当たります。また彼は昔からのしきたりなどは意味がなく、時間の無駄だと考えています。
警察という官僚機構にいながら自由に行動している、それでいて無駄なことはせず問題を迅速に解決するという話は特に逼迫した日本の
社会の中では若年層に受けたのではないでしょうか。
幼馴染のキャリアに伊丹俊太郎という人が出てきますが、性格が正反対で物事をそのまま受け入れて判断しようとするので竜崎とのやりとりが
面白く、スカッとする場面が多くあります。2019年9月の段階では現在隠蔽捜査7まで出版され、竜崎は神奈川県警刑事部長になっています。
第1位 龍臥亭事件(島田荘司著 1996)
島田荘司氏の著作には主に御手洗潔という名探偵と、吉敷竹史という刑事(後に警部)が出てきます。前者は推理をいつの間にか終わらせていて読者にその過程が分からない、後者は読者と共に推理を解いていくという正反対な人物と
として描いています。しかしこの龍臥亭事件はその両方ではありません。石岡和己というごく平凡な、どちらかというと読者に近く、
謎かけをする側の人物として御手洗潔が脇役、そして石岡が主役で登場します。
全体的に横溝の悪魔の手毬唄のような雰囲気を醸し出しており、奇抜なトリックを用いた殺人が発生します。石岡はもちろん解決
できません。途中で御手洗に手紙を送ったりしますが自分で解決せよというばかりです。最後の最後で場当たり的に事件は解決しま
すが、実はこの事件をきっかけに以後御手洗の石岡を見る目が変わってきます。そう、なぜか突き放すことが多くなり、石岡は文句を
言うようになります。島田氏はこのようなことを読者に問いかけて読者の成長を促したのではないでしょうか。
以上ですが他に森村誠一氏の「野性の証明」(1977)も挙げておきたいと思います。映画化もされましたが、小説と結末が全く
異なり、大変ショックでした。